Owl Map(ふくろうマップ)とは

満点の星空 —— それはつい100年ほど前まではあまりにも身近な存在でした。身近すぎたからなのでしょうか、経済成長とともに日本からはほとんど失われてしまいました。いまや天の川は観光資源として認められるほど希少価値があるものになり、「星の見えるまち」として売り出す自治体までもあります。2016年の調査では日本の人口の約70%が天の川の見えない場所に住んでいるそうです。(日経新聞2016/6/14

人間活動の光が夜空を照らすことを「害」と捉えたとき、それを「光害(こうがい・ひかりがい)」と呼びます。夜が明るくなることそれ自体は、大都市の美しい夜景が多くの人の心を癒すこともあるように、必ずしも害ではありません。しかし例えば、たくさんの星を見たい人や望遠鏡を使った天体写真の撮影者にとってはどうにかして逃れたい害になってしまいます。そのほかにも夜間の過剰な光については生態系に対する影響も指摘されています。(例えばWikipediaですがこちらをご参考に)

したがって、光害それ自体が悪かどうかはさておき、光害がどこでどのくらい起きているかを把握することは単に星空観察の実用的な動機のみならず光害を環境問題と捉えたときにも重要なことだと言えるでしょう。いままでそのような取り組みはいくつかありました。有名なものでは「Light pollution map」や「Dark Site Finder」があります。これらのいわゆる「光害マップ」は天文ファンにもよく使われています。

しかし、これらのマップには大きな問題点があります。それは、これらのマップが人工衛星から撮影した夜の地球の写真をほぼそのまま「光害」のマップとして使っていることです。光害は都市の光が大気によって拡散したものです。ところが夜の衛星画像がとらえた光は「その地点の明るさ」でしかありません。実際、上記のマップ上で暗い地域をめがけて星空観察に出かけても、大都市の方向は無視できないくらい明るいことがあります。従来の光害マップは一般的な意味での光害をとらえきれていなかったのです。

そこで「方角別光害マップ」を作りました。首がよく回る「ふくろう」から「Owl Multi-directional Light Pollution Map(方角別光害マップ ふくろう)」と名付けました。星空観望地探しや光害問題を議論する際にぜひご利用ください。余談ですが「Night Owl」は英語圏で「夜更かしする人」を意味するらしいです。このマップが夜更かしなみなさんの手助けになればと思います。それでは良いお星を。

つかいかた

マップ右上のスライダーを動かすと表示されている方角が北から順に8方位で変わります。
一番右側まで動かすと全方角の平均値のマップが表示されます。

色の違いと見える天体

マップの色の違いは空の明るさの違いに相当します。方角ごとにその光害で(快晴の新月期に)ギリギリ肉眼で見えそうな主な天体を書き出してみました。あくまで目安です。他の条件によっても大きく変わります。

もう少し詳しく

ここからはこのマップをどのように作ったかを簡単に説明します。まず、「光害の程度」はどんな要素で決まるでしょうか。例えば、

あたりでしょうか。本来ならばこれらを全て考慮した光害シミュレータを作りたいところですが(いつかやりたいなあ)なかなか難しそうなので今回はとりあえず 以外は無視して考えることにしました。つまり均質な大気の状態で、夜間の時間平均をとった上で、山の稜線よりもだいぶ高い高度での各方角1点の空の明るさを、地点ごとに相対的に比較できるマップを作ったということです。

データはアメリカ海洋大気庁(NOAA)の人工衛星SuomiNPPがVIIRSで撮影した衛星写真を用いました。これは先に述べた「Light pollution map」が使っているデータと同じものです。

次に解析方法についてですが、まず、大気中の光源からの光が距離の指数関数で減衰することを仮定(正木,1963)しました。この論文中の減衰定数はσ=0.2km-1に固定しました。その上で、ある地点について、各方角のある距離の光源からどの程度の光が届くかを計算し、その総和の0.1倍の常用対数をその地点の光害の値としました。色分けはその値に対し線形に施しました。求めた数値には単位がありません。相対比較のみ可能です。そのうちなんとかします(物理量を測定した上で指標を作りたい)。

つくった人・ご意見ご感想お問い合わせ

作者はちゃい( @chai_kus )です。現在、京都大学の二回生です。来年からは宇宙物理学を勉強したいと考えています。

このマップに関するご意見ご感想お問い合わせはツイッターまたはメール( chai.kyoto[at]gmail.com )までお願いします。

【お願い】今後精密なマップを作るために夜空の明るさを実測する必要があり、専用の器具の購入を考えています。ご支援していただける方は、Amazonにほしい物リストを公開していますのでよろしくお願いします!(その器具自体はAmazonにありませんでしたので、もしご支援いただけたならそれで浮いたお金を回したいです...)